日本では、イチゴの年間消費量は20万トンを超すと言われています。
しかし、イチゴは暑さに弱く、6月から11月(夏~秋)の期間には、その消費量のたった1%程度しか国内で生産されていません。この事実は、あまり知られていないのが現状です。
お誕生日のお祝いや催事・行楽、日常楽しむデザートといったことまで、あらゆるシーンに欠かせないのが日本のイチゴです。
そうした市場環境の中で、北東北や北海道など夏季冷涼な地域で僅かに生産されるのが、夏イチゴです。夏イチゴは主に、洋菓子店や飲食店などの業務用に専門的に流通するのが一般的です。
この時期は、需要に対して供給が極端に不足し、その希少性から、高単価で取引されます。夏イチゴは高単価作物の一つとして、農業者の所得向上や農業振興への貢献が期待されています。
夏イチゴ生産のメリット
高収益農業の実現
夏イチゴは、他の作物の経営指標とは比較にならないほど、極めて高い収益性があります。
上述の通り、極めて需要が高く高単価で取引されるため、しっかり品質管理や生産管理を行えば、比較的早期に一定の収益を確保することが可能です。
栽培適地が限られたり、高度な生産技術を要すといった点で一定の参入障壁が存在するため、潜在需要も含めた総需要に対して、供給が追い付く気配はまだありません。
項 目 | 夏イチゴ | トマト(施設夏秋) | アスパラガス(施設半促成) | ダリア(施設) |
---|---|---|---|---|
10a売上 | 703万円 | 304万円 | 210万円 | 293万円 |
データ元 | 当社実績(2018)※農研機構東北農研との協定研究実証値 | 秋田県作目別経営指標(2020) | 秋田県作目別経営指標(2020) | 秋田県作目別経営指標(2020) |
作業性、リスク軽減
夏イチゴの栽培システムは、高設養液土耕栽培が一般的です。
手入れや収穫の際、露地栽培のようにかがむ必要が無く、写真のように立って作業できるため、身体的負担の軽減や作業スピードが格段に向上します。
また、高設栽培は天候リスクの軽減にも一役買っています。
近年、異常気象による豪雨災害が各地で多発しています。豪雨や河川氾濫などは、特に露地栽培の作物に多大な損害を発生させることがあります。
しかし高設栽培であれば、万が一ハウス内が冠水したとしても、上部の作物は浸水を回避することができます。高収益でありながら、自然災害リスクを低減させられる技術が確立されています。